ナルキッソス 著 片岡とも

ナルキッソス (MF文庫 J か 5-1)
 「……ただ、生命の尽きる場所」。ある冬の日に阿東優が入院した「7F」は、そういう場所だった。そのことを彼に告げたのは、長い黒髪を持つ同じ入院患者の美少女。名前はセツミ、血液型O――手首の白い腕輪に書かれていたのは、ただそれだけ。他にわかることといえば、いつも不機嫌そうな顔をしているということと、優より年上なのに、まるで子供のような外見だということぐらい。最期の時を迎えるのは、自宅か7Fか。いずれの選択肢をも拒み、ふたりは優の父親の車を奪って走り出す。行き先も、未来さえも持たないままに――
 片岡ともってカリスマクリエーターだったのか、「みずいろ」しかねこねこソフトをプレーしたことない身としては、そんな感じが悲しいかな余りしない
 しかし、淡々とただ淡々と余命幾許もない男女の病院からの逃避行が書かれていくわけですが、正直なところ物語として盛り上がりがあるわけでもなく、キャラクター達の感情の爆発が頻繁するわけでもなく、なんかすごい奇跡や救いが起きるわけでもない
 つまりのところ、徹底として最後の感情の爆発のために無感動に徹する物語、というわけなのです、確かにライトノベルという分野で考えるとあまり合っていないわけなのですが、元同人ゲーム媒体というのを考えるとそういったものもありなんだろうか、とも思う
 物語としては面白いとは思うのですが、何とも退屈ってのも正直なところで、まあ作品の雰囲気を出すのは正解なんだし、そこは肯定するところなのですが、なんというか読んだ後にこっちまで色々と感情が抜かれる感じがして怖いというか、なんだろうか